■ Otafuku Sauce
Advertising / Video Creation / Inbound Branding
オタフクソース社(本社・広島)が出展していた東京の催事での名刺交換が契機となり、同社が2023年5月の広島G7サミット開催時期に合わせた「お好み焼文化」の認知拡大を目指すエリアブランディング広告となるビルボードデザイン提案への競合参加機会を獲得。同社のこれまでのブランドイメージ戦略に対する先入観のない「新参者」である弊社は、その立場を利用して大胆な解釈の表現プランを複数提案。奇しくも採用をとなったのは、1番目に提案した、同社のコーポレートスローガンを多言語化した上でブランドロゴ自体をOKONOMIYAKIアイキャッチデザインに組み込むというシンプルで大胆な、同社的にはおそらく斬新なアプローチであったと思っている。
この時、同社内では市内メディアジャック企画が立案されていたようだが、コンペ採用表現案の絶妙なブランド訴求と食文化訴求のバランス感が、企画実施の承認を後押しできたのではないかと信じたい。
複数の市内掲出メディア想定の中にバス停広告があり、広島市の公共交通広告における「紙面内の印字総面積30%以内」という規定をクリアしなければならなず、「斜め3行アイキャッチデザイン」を緊急追加考案。これがその後のメディアジャックデザイン展開における重要なデザインエレメントとなる。
これとほぼ同時期に考案を進めていたお好み焼店舗掲出用のポスターでは、コロナ後急増するであろう訪日外国人観光客へ向けたデザイン表現が必要ではあった。店舗掲出用ということもあり、ブランド露出は極力抑え、「お好み焼食文化訴求」が最優先の開発命題であったが、シンプルに「広島のソウルフードお好み焼を楽しもう」という英語のメッセージに切り替えたつつも、敢えて大きなブランドロゴを内包したままのアイキャッチデザインプランを提示したところ、まずクライアント担当者がこのデザイン表現への手応えを素直に感じていただき、その熱量がそのまま店舗経営者らに伝わり、同社として今までにない斬新なデザイン表現であったことやシンプルな英語メッセージが、日本人旅行者にも通用しそうということで非常に好意的に受け入れられ、多くの店舗で掲出されることとなった。
この店舗用ポスターは、ブランド訴求と食文化訴求を高次元で具現化することのできた開発事例となり、その表現が、ほぼそのままG7開催時の外国人向け地方紙広告(英文版)へとデザイン展開できたのも印象深い作業であった。一方、同時出稿した日本語版広告では、広島の「被爆地からの復興」と「お好み焼」の文化を、ナラティブに伝えていきたいというクライアントの要望に応え、記事広告風のデザインを提案。クライアント担当者と入稿ギリギリまでコピーを模索・調整するなど、思い入れの強い作業となった。
また同時期、JR広島駅構内の広告展開では、1行版と3行版のアイキャッチデザイン広告が併設される場面があったが、掲出場所の距離感を活かし、ブランドロゴやシズルカットのサイズ感を揃えたことで、2種類のアイキャッチデザインが併用される複雑なグラフィク展開となった。結果的に統一感を保たせながら視覚的な効果を高めることに成功することができた。
このユニークな一連の広告展開は、まさにクライアント担当者と共に掲出メディアごとの課題に都度立ち向かい、共創により具現化できたプロジェクトと言える。訪日諸外国メディアや観光客向けという、これまで長年手がけてきたレクシスクリエイティブの多言語クリエイション対応力を活かしたチャレンジが、良い形で結実したアートディレクション事例として位置づけている。
※同広告キャンペーンは宣伝会議ブレーン誌2023年8月号にも紹介されている。