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Black Impact

1.中国の若い世代を巻き込むCool&Stylish

これまでLEXISは、王子製紙ネピア(蘇州)有限公司上海分公司(=上海ネピア)の数多くのパッケージデザインを手がけてきているが、大きなトッピックスとなる2005年の「ブラック・ブラック・ネピア!」のデザイン開発については、LEXISにとっても非常に大きな出来事であっただけに、ここでご紹介したいと思う。

2002年に上海ネピアと開発した「ネピアらしいデザイン概念」=「ジオメトリック(幾何学)・デザイン」によって全面的なデザインの見直しを行ったことにより、ネピアブランドの市場認知度が向上してきた中、2005年に多くの主力商品のデザインを大幅にリニューアルしていくプロジェクトが立ち上がった。課題は「さらにネピアを中国の若い世代に使ってもらえるブランドにしていく。」というものだった。LEXISでは社内プロジェクトチームを立ち上げ、さらにブランドイメージを強化して若い世代にリーチするには、どのようなデザインが求められているのかを分析し協議を重ねていた。様々な商品デザインの企画プランが進行する中、日本ではあまり馴染みのない仕様ではあるが、ペーパーナプキンのように使用する「ハンカチーフ型ティシュ(HK)」のデザインについての協議を進めていた際、開発スタッフから「もっとクールで格好良いパッケージがあったら男性でも使うんでしょうか?」という発言があった。

なるほど、これまでクライアントから入手している情報では、HK商品のユーザーは圧倒的に女性であった。「男がHKなど使うものではない」という社会風潮もあった。しかし、若い男性の世代でも「これなら使いたい」と思わせるパッケージデザインがあるのではないだろうかということで、他のプランを実行しながら男性向けパッケージのアイディアを集めていくことになった。
一度でも中国の大型スーパーマーケットを訪れた事のある方ならお分かりの事かもしれないが、日本の家庭用紙(ティシューやトイレットロール、キッチンペーパーなど)の売り場状況と見比べると、中国のそれは大きく印象が異なる。

 

BlackBear(©dick bruna)

2.ブラック・ベアを起点にパワーアイディアへ。

日本の若者が好む傾向や、市場に出回っている「思わず目に止まったパッケージ」などを集めていく中、ディック・ブルーナ氏が手がけた「ブラック・ベア」の作品を掲載した書籍を、なんと日本の王子ネピアから入手した。聞くところによると、丁度その頃、王子ネピアでキューブ型ボックスティシューのパッケージデザインに「ブラック・ベア」を使用した期間限定パッケージを作った際の資料だと言う。ブルーナ氏と言えば「ミッフィー」だが「ブラック・ベア」もなかなか個性的なキャラクターで、ブラックだけに「黒」を基調とした世界観を持っていた。この資料も並べつつHKの企画ミーティングを進めていた中、開発メンバーから「これの、この部分をパッケージにしたらオシャレじゃないですか?」と1ページの表紙を指差した。

そこには真っ黒な背景に四角に区切られた窓枠。その窓明りの一箇所にベアがいる絵が描かれていた。黒い背景に馴染むブラックベア。なんとも素敵で、配色もブルーナ氏らしいシンプルな配色。確かにこれだけをパッケージにしてもで十分可愛らしい。しかし中国市場ではライセンス契約の面で同キャラクターを使用した提案はすべきではない。そこで黒い背景に格子状の窓だけをシンプルに描いたHKデザイン用のスケッチを描いてみたところ、それだけでもの凄くモダンな印象を受けた。しかもちゃんと「ジオメトリック・デザイン」になっている。「これは良い!」と即決し、急ぎデザインに着手した。

3.既成の枠を突破したブラックデザイン。

 「黒いパッケージ」というのは、これまでの中国市場には見られない。現地スタッフにヒアリングしても「黒」はパッケージには相応しくないというイメージを持っていた。しかしこれはただの「黒」ではない。ワンポイントの格子窓を活かすための「黒」なのだ。HKデザイン提案日が近づく中、リスク回避のために「黒いパッケージ」は自主提案候補として出すことにした。

2005年のデザインプレゼンテーション時の反応は今でも忘れられない。この「黒いパッケージ」を見た途端、参加者がどよめいた。「黒」に対するネガティブな反応かと焦ったが、違った。「このアイディアは素晴らしい。このままデザインを進めてほしい。」というものだった。

このような仕事をしていると、「パワーアイディア」というものが降り注いでくることがある。この「黒いパッケージ」はまさにそうだった。一瞬のヒラメキや、何気ない会話の中で、光明が見えたケースである。開発チーム内だけでなく、クライアント側からもデザインや仕様設定に対して建設的な意見が出続け、クライアントの素晴らしいアイディアでこの商品のペーパー本体に「スパイシー・フレグランス」を塗布した発売が決定した。これまでの中国市場に対して、かなり挑発的なパッケージを投入することになったわけだが、LEXISが名付けた「ブラック・ブラック・ネピア!」は爆発的な人気商品となり、今では上海ネピアを代表するプロダクトとなった。

当初思い描いていた男性ユーザーの獲得だけでなく、クールなデザインを好む女性からも評価を得られ、現在では「ブラック・ブラック・ネピア!シリーズ」として様々なプロダクトデザインに展開している。
まさに、瞬間のヒラメキと自主提案がブランドを代表するシリーズ商品を生み出した、奇跡的なデザイン開発だったと言えるだろう。ただ一つ悔やまれるのは、あまりにデザインが好評だったため同シリーズはその後なんと9年間デザインリニューアルが行われなかったことだ。(2014年にブラックシリーズのフルリニューアルをLEXISが行っている。)

BlackBlack nepiaリニューアルパッケージ

History With Nepia Top