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Cubic Wet Tissue

1.「風呂場のイス」とは違うたたずまい。

 「風呂場のイスみたいでつまらない」。そのひと言からスタートした王子ネピアのウエットティシュ・デザインプロジェクト。開発オーダーは、「店頭に出回っているのは、どれも風呂場に置いてあるイスみたいだ。それとは全く違う新しい存在感つくれないか。」というもの。
 社内でプロジェクトチームを立ち上げ、ブレストを重ねていくうちに、アイディアや方向性も色々と出てきたが、「キューブ型を作ってみたい」という意見をきっかけに、企画の軸足をそこに据えることになった。当時の「Mac Cube」や「Mac mini」のフォルムに触発され、無駄のない洗練されたデザインという方向でコンセプトが絞り込まれていった。単なる立方体でなく垂直軸にあたる部分の角を丸くしたらおしゃれじゃないか。回転式やワンプッシュ式、開閉部をスマートにしたいなど具体的な意見が交わされた。まずは好き勝手にこんな感じはいいなぁ、こういう手もあるなぁなどとスケッチを描き、さまざまな意見をブラッシュアップさせてCGで清書。着々と準備も整い企画プレゼンを行った結果、クライアントからデザイン実施の承認を得られることができた。

 しかし、ここで立ち塞がったのが成型業者での検証。コストを考慮し、中国生産することは決定していたため、上海で活躍する日本人技術者を直接訪問し設計を依頼した。けれども、出来上がってきた試作模型を見ると、開閉部の仕様が提案通りには実現できないことが発覚。予定では天面全体がフタとなり、タッチすると天板が開くというものだったが、模型では正面の一部が階段状に欠けていたのだ。全面、全辺がフラットで丸みを帯びたフォルム。そのイメージとの違和感は拭えず、妥協するわけにはいかない。そんな気持ちとは裏腹に、成型業者からは商品化するためにはこれ以上の対応は難しいという一点張りの答しか返ってこなかった。

開発当初のラフ・カラーイメージ

2.『なんとなく好き』への再チャレンジ。

 とりあえず修正のリクエストは伝えつつ、コンセプトに立ち還り再検証を進めた。そこへ送られてきたのがクライアントの担当部長から戴いた一通のメールだった。今までにない存在感とは? それを見出すための貴重な意見だった。

 「本品は日本に例のない、効率から考えた商品とは全く違う『物』です。形・素材を含め、その『たたずまい』が商品価値を決め、人の心に『なんとなく好き』という、AIDMAの流れではなく、アテンションから一気にアクションに持って行く狙いを持っています。このまま妥協したくなく、ぜひ検討頂きたい。お願いいたします。『なんとなく好き』とは、例えば『安いから好き』は、もっと安いものが好きだが、 『なんとなく好き』には答えがなく、他のものと比較ができない。従って全部が好きで強力です。
『なんとなく』は、真似しにくいという特性があります。ロジカルに説明できない良いモノは再現しにくいし、似たような競合商品が出現しにくい。1度ささったら競合への乗り換えが少ないはずです。」(一部要約)

 早速、理想とするイメージ通りの形状へ変更を求めるため紙工作でモックアップを作り直した。フタを開閉する仕掛けは妥協せず、階段状になっていた箇所を、ボタンが出っ張るようにし、フタを閉じた状態で美しいキューブ型のフォルムに成型した。そして、それと共にクライアントに伝えたのが「絶対こっちの方が格好いいと思います。」というブレない自信だった。
 担当部長からは本当に即答で「OK!これです、これはいい!」という力強い一言。もう一度試作を作るには、かなりコストがかかるのだが、芯の通った企画と再試作する意義が認められ、諸々の交渉をして戴いた。成型業者の担当者も仕様変更に快諾。無事、新規格での試作模型の再開発が決定したのだ。
 再試作後もずっと言われ続けていた「たたずまい」をクライアントに満足してもらうレベルで完納を迎えられたこと。もちろん最終過程に至るまでは改善点も出てきたが、関係者全員が最初の試作と比べても、明らかにレベルアップしていることを感じてくれた。
 こうして製品化された、王子ネピアcubewet(キューブウエット)。中国上海での試験的販売を機にさらに改良を加え、満を持して日本発売に至った。

History With Nepia Top